1臨床的研究 報告された国内外のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌性腸炎(MASA腸炎)の24症例、および自治医科大学附属病院において過去10年間にMRSA腸炎と診断された168症例をreviewし、このうち以下の基準を満たす症例をMRSA腸炎として検討した。(1)1日3回以上、2日間以上持続する下痢、(2)便からの単独または優位なMRSAの持続的検出、(3)Clostridium difficileの便培養および毒素陰性、(4)バンコマイシン服用による症状の改善。基準を満した症例は合計17例であった。ヒトにおいて便からMRSAが単独・優位に検出される腸炎は確かに存在することが確認された。それらの腸炎では発熱や水様性下痢を認める症例が多いが、発症前に使用された抗菌剤に特定の傾向はみられなかった。 2マウスを用いた検討 ICマウスにMRSA10^7CFU/mlH_2O(±Streptomycin 1 mg/H_2O)を飲水中に添加し、経口的に投与し継続的に観察した。MRSAを投与されたマウスの75〜80%は投与20日以後でも、さらにそのうち50〜70%は投与後70日においても持続的に便からMRSAが検出された。Streptomycin無投与でもMRSAの1日投与のみでもMRSAが投与後20日目に検出可能なマウスもいたが、MRSAが腸管に定着したマウスでも便は軟便になるものの下痢を示さなかった。MRSAの腸管定着は比較的容易におこると考えられ、MRSA腸炎の発症には他の何らかの因子の関与が必要であると考えられる。 3 MRSAを感染させた培養腸上皮細胞(Caco-2)の原子間力顕微鏡による観察 MRSAの浮遊培養液を加えて培養した腸上皮細胞(Caco-2)を原子間力顕微鏡にて槻察した。現時点ではまだ数回程度の観察であるが、感染によって扁平化する細胞の様子が観察された。
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