昨年度の臨床および基礎研究に引き続き臨床研究を実施した。 昨年度は"MRSA腸炎"と診断された症例に関して、国内外および当病院における報告を基に、MRSA腸炎の診断、特徴および危険因子を検討したが、今年度は当医療機関の細菌検査室に提出された便検体のうち無作為に抽出した246名の391検体に関して、細菌培養および同定を行い、MRSAの検出率の算定を行った。 2003年11月から2004年2月に細菌検査室に検体が提出された検体を無作為に対象となった患者の年齢は0〜92歳で、年代別MRSA検出率(人数)は0歳9.5%(2人)、1〜9歳8.6(3)、10代0(0)、20代13.3(2)、30代13.6(3)、40代0(0)、50代3.6(1)、60代19.4(6)、70代39.2(12)、80代7.7(1)、90代50(1)であり、高齢者の便からMRSAが多く検出されることが明らかとなった。これら391検体のうち下痢便は16検体(40.9%)で、MRSAが検出された検体は61検体(15.6%)、MSSAは16検体(4.1%)から検出された。MRSAが検出された検体のうち、下痢便であったのは30検体(49.2%)で、MRSAが検出されない便での下痢の出現率(39.5%)に比較して、有意に高かった。下痢便の中でMRSAが検出される率は18.8%であるが、有形便であってもMRSAは13.4%の検体から検出されており、便からのMRSA検出だけではMRSA腸炎の診断は確定できないことが証明された。
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