研究概要 |
1.日本人に見られた異常ヘモグロビン(Hb):Hb A1c測定中に,その存在が疑われた2種の異常Hbのタンパク構造解析と遺伝子解析から,これまでに発見されていない新しい異常Hb,Hb Fukui[α139(HC1)α2Lys→Asn]を同定した。このHbの変異位置は,これまでに日本にのみ発見されているHb Hanamaki[α139Lys→Glu]とHb Tokoname[α139Lys→Thr]と同一コドン内での変異であった。一方,Hb Turriff[α99(G6)Lys→Glu]はα1グロビン遺伝子での変異であり,その塩基変換は日本人特有であった。 2.ミャンマー人にみられる異常Hb:ミャンマー人の中にはHb E症の保因者が非常に多い。今は,Hb Eを産生するβ^E-グロビン遺伝子群の7点のRFLPからハプロタイプの特徴を調べた。a:-+-+++-,b:+----+-,c:+--+++-の3種に集約され,aとb型は隣国タイでもみられるがc型は特異的であった。 3.タイ人のサラセミアの診断とHb A_2値の有用性:CBC測定結果から,正常50人とサラセミアの疑われる200人のタイ人について,自動測定HPLCを使ってHb A_2値を測定し,αおよびβサラセミアの遺伝子診断を行った。Hb A_2-MCV,Hb A_2-MCHの散布図を作成すると,βサラセミア保因者では常にHb A_2値が4%以上を示し,MCVとMCHは低値(<70fL,<25pg)を示した。また,αサラセミアでは,αサラセミア-2,αサラセミア-1,Hb H症と重篤になるにしたがい,Hb A_2値も正常値(2.2-3.5%)より低下し,MCVとMCHも順次低下し,Hb A_2とMCVやMCHからサラセミアの診断の可能性が伺えた。
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