有明海の海水、干潟の汚泥、および魚介類について、年間のビブリオ・バルニフィカスの汚染状況を調査し、有明海におけるビブリオ・バルニフィカスの生態系を把握する。さらに、ビブリオ・バルニフィカス感染症患者から分離されたビブリオ・バルニフィカズと有明海の魚介類、海水、および干潟汚泥から分離同定されたものの細菌学的解析、薬剤感受性試験、および遺伝子解析を行い、その差異を検討する。 2001年1月より12月まで、毎月2回、大潮の干潮時、筑後川、矢部川、および菊地川河口の合計3定点で、海水および干潟汚泥を採取し、ビブリオ・バルニフィカスを分離同定し、最確数を算定し、有明海の汚染度を測定した。魚介類は、調査日にエツ、クツゾコ、タイラギ貝、メカジャ、ウミタケ、シャッパ、アサリ貝、ワタリガニ、ハゼ、イイダコ等を、柳川市沖の端漁港の特定の鮮魚店で購入し、内臓よりビブリオ・バルニフィカスを分離同定した。なお、調査日には外気温、海水温、および干潟汚泥温を測定した。 海水からのビブリオ・バルニフィカスの最確数は、1月から5月までは少ないが検出された。6月より徐々に増加し、7月、8月、9月にピークに達した。そして、10月より徐々に減少した。最確数が0の月はなかった。 干潟汚泥からのビブリオ・バルニフィカスの最確数は、散発的にしか検出されなかった。しかし、年間を通して分離同定された。 調査したほとんどの魚介類の内臓からビブリオ・バルニフィカスが分離同定された。季節的には夏期に分離される頻度が高いが、夏期以外の季節でも分離された。 パルスフィールド・ゲル電気泳動法による菌の遺伝子解析では、制限酵素Xba1を用いるとすべてがsmearとなり、解析できなかった。制限酵素Not1を用いると、バンドは検出されるが、患者およエツから分離されたビブリオ・バルニフィカスはsmearとなり、完全な形での比較解析はまだできていない。
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