研究概要 |
異種動物由来のモノクローナル抗体をヒトに投与する場合の抗原性を解決するため,ヒト抗体遺伝子を導入したKM Mouse TMを用いて癌胎児性抗原(CEA)に対する完全なヒトモノクローナル抗体(HmAb)を作製し,その免疫化学的性状および抗腫瘍活性を解析した. CEAで免疫したKM Mouse TMの脾臓細胞とマウスミエローマ細胞株を常法により細胞融合させ,CEA遺伝子ファミリータンパク(CEACAM)を用いて抗CEA抗体産生ハイブリドーマクローンをスクリーニングした.ヌードマウス腹水より得られた抗体を精製し,ELISA,FACSおよびBIAcoreにより解析した.46個の抗CEA HmAbを得たが,CEAとのみ反応するものは22個であった. CEAとのみ特異的に反応するHmAbの中から,affinitiyが高い抗体を選び,まずCEA発現ヒト胃癌細胞株に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)と補体依存性細胞障害活性(CDC)の活性を調べた.ヒトリンパ球とのADCCはE/T ratio 20において40〜65%の傷害活性を示した.また,新鮮ヒト血清を補体とするCDCでは,IgG1およびIgG3のHuMAbは約55〜65%の高い傷害活性を示した.さらに,CEA発現胃癌細胞株を皮下に移植したSCIDマウスを利用してin vivoでの抗腫瘍効果をみたところ,IgG1のHuMAbを投与した群では対照群に比べ有意な腫瘍増殖抑制効果が見られた.このように,抗CEA HuMAbの中にはin vitroでもin vivoでもCEA産生癌の増殖を抑制するものが存在した. 以上の結果より,KMマウスを用いて作製した抗CEA HuMAbは副作用の少ない抗体としてCEA発現癌細胞の免疫治療に有用と思われる.
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