NK細胞やCTLの標的細胞破壊として顆粒放出経路が知られており、顆粒内細胞傷害性分子が標的細胞を破壊する細胞傷害性分子の一つとして分離されたgranulysinは15kDa前駆体として合成された後9kDg活性型となり細胞傷害性顆粒内でperforin等とともに貯蔵されているが、細胞傷害の場で標的細胞に対して放出される。申請者はgranulysinの細胞内発現をフローサイトメーターで定量的に測定する系を確立し、NK細胞内granulysin発現は健常人と比べて癌患者で有意に低下し、これがガンの進行、免疫状態の低下と相関していることを報告した。また、granulysinは末梢血上清中にも分泌されており、今回、申請者はこの分泌をELISA法により定量する系を確立することができた。そして興味深いことには、この系で検出されるgranulysinはwestern blot解析により15kDaのみで9kDaは検出されなかった。分泌された15kDa granulysinは刺激なしでも検出可能でその主たる産生細胞はNK細胞であり、NK活性、NK細胞数との関連性を認めた。また、NK活性を亢進する刺激により分泌量のさらなる上昇を認めた。そして、癌患者ではその分泌量が健常人に比べて有意に低下していたが、病態によっては異常高値を示す症例も見られた。このように、分泌granulysinによる評価は、NK活性測定のような標的細胞培養を必要としないことから煩雑でなく測定変動も少ない、また、IFN-γ測定と違って刺激なしでも十分検出可能でphysiologicalな免疫状態が反映される利点があるした。がって、ELISA法を用いた分泌granulysin測定法が宿主の免疫状態を簡便にしかも的確に把握する有用な評価法となることが明らかになった。
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