MK細胞やCTLの標的細胞破壊として顆粒放出経路が知られており、標的細胞を認識し接触すると顆粒内に含まれる細胞傷害性分子が標的細胞を破壊する。細胞傷害性分子の一つであるグラニュライシンは15kDa前駆体として合成された後9kDa活性型となり細胞傷害性顆粒内で貯蔵され、細胞傷害の場で標的細胞に対して放出される。申請者らはグラニュライシンの細胞内発現をフローサイトメーターで定量的に測定する系を確立し細胞内グラニュライシンの発現を検討した結果、NK細胞内のグラニュライシン発現は健常人に比べ癌患者で有意に低下しており、この低下はガンの進行、免疫状態の低下と相関していた。一方で、グラニュライシンは末梢血上清中にも分泌されていることが明らかにされた。そこで申請者はヒトの末梢血のグラニュライシン分泌量をELISAにて測定する系を確立し検討した結果、PBMC分離後3時間から検出可能になり22時間でほぼピークに達した。また、グラニュライシンは恒常的に合成され、その主たる産生細胞はNK細胞であり、標的細胞K562と共培養するとさらに増加することがわかった。そして健常人ではPBMC中のNK細胞数と正の相関を認めた。一方、癌患者ではその分泌量が健常人に比べて有意に低下しており、NK活性などの免疫状態低下した症例では低い傾向を認めた。しかし患者の中にはグラニュライシン分泌量が異常高値を示す症例も見られており、その際の主たる産生細胞はCD8+T細胞であることが明らかになった。 これらのことから、PBMC上清から分泌されるグラニュライシンは、刺激なしで測定可能であるので、宿主のphysiologicalな免疫状態を簡便にしかも的確に把握する有用な評価法となることが明らかになった。
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