1.日本の離れた地域の8医療施設において、抗菌薬関連下痢症/腸炎症例から分離されたClostridium difficile 241菌株を収集し検討した。 2.241株について毒素産生性を検討したところ、187菌株がtoxin A陽性toxin B陽性(A+B+)、残りの54菌株がtoxin A陰性toxin B陽性(A-B+)であった。 3.16S rRNA geneと23S rRNA geneの間のintergenic spacer regionをPCRにより増幅するタイピング法により解析したところ、100株のA+B+株が同じタイプ、PCR ribotype smzであり、8医療施設中6医療施設で各々最も多くの症例から分離され複数の医療施設で流行株となっていることがわかった。 4.A-B+株は、8施設すべてにおいて認められ、PCR ribotypingにより54株が4タイプにわけられた。そのうち、PCR ribotype trfにタイプされた46株中45株が2施設において分離され、パルスフィールド電気泳動によるタイピングによっても同じmajor typeにタイプされたことから、この2施設におけるtype trf株の院内集団発生が示唆された。 5.このtype trf株を、散発例で多く認められたA-B+のPCR ribotype fr株と比較解析したところ、toxin A遺伝子の5'末端部分のnonsense mutationによるstop codonの存在、3'末端部分の遺伝子欠損、Vero細胞における細胞毒性、血清型に差異はなく、調べたかぎりではtype trf株に特別な特徴は認められなかった。
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