ラットでクローニングされた新しい腎有機酸トランスポーター遺伝子は、尿酸に特異性を有することが示された。そこで、本研究に先立って、研究代表者はヒト末梢血RNAよりPCRクローニングにて同mRNAのヒトホモログをクローニングし、さらにデータベースからバイオインフォマティックスの手法で全長にわたるヒトホモログの配列情報を確定、その後同配列を参照して、新規にヒトcDNAをクローニングした。このヒト有機酸トランスポーターアナログのcDNAを用い、以下のを行った。 1.PAC遺伝子ライブラリーから同遺伝子(UAT)をクローニングして全塩基配列を決定した。 2.エクソン・イントロン境界を同定し、全遺伝子構造を確定した。 3.プロモーター構造を決定し、転写因子結合部位をコンピュータ予測した。 4.臓器特異的なalternative splicingの存在を明らかし、病態との関連を分析する素地を得た。 5.遺伝子・タンパク質の構造解析をコンピュータを用いて行い、Extracellular domainとCytoplasmic domainを分類した。以上のドメインにはそれぞれ抗体としての特異性に特徴があると考えられるので、これらからそれぞれペプチド合成を行って特異抗体を作成した。 6.本遺伝子が癌、とりわけ腎臓癌で高発現するため、その血中濃度測定を新たな腫瘍マーカーとして位置付けるための検討を加えた。 7.癌転移のマーカーとしての評価を行なうため、アッセイ系確立とその臨床評価が今後可能となるように、各種条件設定をした。 本研究は尿酸転送機構の分析に端を発してさらに広くがん研究への応用が可能となったテーマであり、今後さらに具体的な成果を求め、臨床応用を目指している。
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