障害児を持った家族の初期の心理の理解と家族支援の介入モデル作成のために障害児を持つ家族にグラウンデッド・セオリーの理論を用いた半構造化された面接法を継続して行っている。また、患者組織の国際会議に参加し、欧米の患者会の活動内容などを調査した。 その過程で、以下の内容が示された。 1)母親側には、「期待と失望と現状の受容」「母親の子への愛着の形成」「医療・制度に対する不満」「父親に対する大きな期待」が浮かび上がってきた。一方、父親側には、大きな役割期待を受けながら、子どもの障害受容に対するサポート体制が十分でなく、孤立しがちな状況があった。 2)内外比較においては、欧米の父親は、「親権者としての責任」が強く、養育に関しても主体的に関わる傾向がみられるのに対し、日本の父親は、障害児の養育に関しては母親に任せる傾向にあり、「経済的安定による家族支援」、「障害児の兄弟への対応」等の側面支援が主であった。 3)遺伝性疾患の場合、欧米では病気の保因者となることは誰しもあり得ることとして、マイナスにとらえず、そこからの策を講じようとするのに対し、日本においては負のイメージが大きく、オープンに語られないのが実情である。 4)患者会組織において、欧米の活動では、「研究領域への寄付」、「制度改革への政治的活動」、「インターネットを通じての情報開示」というキーワーズが出てきた。日本では、情報提供や孤立化を防ぎ心理的サポートとしての役割があるが、父親の意識と参加は欧米に比べ高くない。 以上の点は、まだデータ収集の途中経過での報告内容である。サンプル数に限りがあることを付け加える。今後も、データ収集を行い、理論の構築と介入モデル作成へとつなげていく。
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