研究概要 |
人間関係の調整には言語による調整以外に,いわゆる非言語的情報伝達が重要であると言われている.この非言語的情報伝達は,(1)表情,(2)視線行動,(3)対人距離,(4)タッチング,(5)姿勢などが代表的なものであり,これらの情報を通じてかなりの程度の交渉が日常的に行われている. この研究では,看護職を目指している学生の入学時から卒業までの対人関係,さらには就職後の対人関係の経過を,実際の対人距離と心理的対人距離,また,理想とする対人距離を測定し分析を行う.同時に病室を想定した実験場面で,対人距離と心拍数や瞬目などの生理的指標を測定し,看護職を目指す学生の対人距離の調整の仕方の経過を分析した.これらの2点をふまえて現場に応用するとともに,基礎看護教育における教育プログラムの開発に必要な知見を得ることを目的とした. 調査や実験を行った結果次のことがわかった. (1)基礎実習など初めて患者と接する場合に,3日間ほどで適切な距離のとり方を学んでいくことがわかった.学生が患者との間に取っていた距離と,とりたい距離との差は実習3日目でほとんど一致した.実習の経験が増加すると,自分の思う患者との距離をとることに時間がかからなくなる. (2)3年次での領域別実習において,急性期看護,精神看護実習どちらの実習においても初対面時においては対人認知は対人距離に影響していたが,最終日には影響は見られなかった.また,初対面時より最終日に対人距離は短縮していた. (3)実験では,臥床している人への接近の仕方を見ると,腹部から接近した場合と頭部の近くに接した場合では,頭部から近づいた場合に血流量が低下し,収縮期血圧上昇,心拍数も上昇し緊張している状態が考えられた.
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