研究概要 |
1.目的 本研究の目的は、介護保険前からのコホート集団を追跡し、高齢者が地域においてどのように療養の場を移動しているのか、その背景を本人および介護者の心理社会経済的側面を含めてその要因を明らかにすることである。 2.平成16年度に主に実施した研究計画 1)2000年2-3月に愛知県A町にて,65歳以上の高齢者を対象とした悉皆調査を実施した。その後4年間の追跡調査から,居所の移動と関連する要因を明らかにした。 2)2000年4月1日の時点で,在宅で要介護認定を受けていた高齢者458人の(1)要介護度や居所(入所・入院・死亡、転出等)の年次変化(1年後、2年後、3年後)の自然暦を、介護保険関連行政データを用いて明らかにした。 3.成果 1)4年後の状況:3309名の健康高齢者のうち生存している者は2866名(86.6%),死亡した者は379名(11.5%),転出した者は64名(1.9%)であった.この4年間の追跡調査では,A町では1年間に約95名が死亡していたことになる.3309名のうち,要介護認定を受けた者は445名である.この4年間で,A町では1年間に約170名が新たに要介護認定を受けていた. 2)要介護認定後の居所:要介護認定を受けた445名の居所を要介護認定データから追跡した.「居宅」を維持した者は286名で,「居宅」へ戻った者は76名,「居宅」以外の者は83名であった.「居宅維持」「居宅復帰」「居宅外」の3群で差が見られたのは要介護度と住環境であった.要介護度は「居宅外」群の方が「居宅維持」「居宅復帰」群より要介護度が高かった.住環境という側面では,家族形態ではなく,持ち家かどうかが居宅維持と関連していた.ADLやソーシャル・ネットワークなどの要因については差が見られなかった.
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