研究概要 |
本研究の目的は,介護保険だけでは充足できない高齢者・障害者のニーズ・課題に応じる保健師の実践モデルを開発することである。 平成14年度は,その第一段階として,難病や高齢者虐待などの対応困難事例と関連の保健事業を担当する保健師に研究参加を求め,介護保険給付外の課題に対してどのような活動展開が効果的かについて,彼らが実際に行った活動を通して検討した。また,平成12・13年度の基盤研究C(2)で行った研究課題(要介護状態の予防に向けたケアマネジメント技法の体系化)の成果にも照らして効果的な活動展開を検討した。 研究方法は、アクションリサーチである。研究に参加した保健師は,まず,保健師が解決すべき課題を分析し,活動の目標,活動内容,および評価方法について計画を立て,研究者のスーパーバイズを受けながらそれを実施し,最後に評価を行った。研究者は、保健師の行う一連の過程に対してスーパーバイズを行った。一連の経過は,保健師自身と研究者により記述した。その記述内容を分析したところ,介護保険だけでは扱えない課題の中で保健師が専門性を発揮していたものには,難病や虐待などの専門的アセスメントやチームアプローチを適切に行うための基盤づくり,介護支援専門員をはじめとする関係職種の質を高めるための人材育成・研修の企画・実施,事例のニーズ集約とそれに応じた市町村毎の予防・支援体制の整備,それらの活動を起こし継続することに対する市町村の意思決定の促進,住民や当事者参加の促進などがあった。現在,それぞれの課題について,保健師による活動が成果を出した例について,その記述内容を読みとり,実践モデル試案を構成する要素を抽出している。その中で,保健師は,直接的もしくは間接的な個別事例への支援を通して,地域で生活する高齢者や障害者の療養支援課題を明確にし,それを解決するために,多分野に渡る社会資源提供側に対して,柔軟で臨機応変な働きかけを行っていることなどが読みとれている。次年度はさらに分析を進め,実践モデル試案を作成し,その信頼性・妥当性を高める調査研究を行う。
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