研究課題/領域番号 |
14572222
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研究機関 | 島根大学(医学部) |
研究代表者 |
田中 道子 島根大学, 医学部, 教授 (80279629)
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研究分担者 |
松田 晶子 島根大学, 医学部, 助手 (10362930)
古瀬 浩介 島根大学, 医学部, 教授 (20156970)
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キーワード | 市中肺炎 / 高齢者 / 入院期間 / 長期化 / 要因 |
研究概要 |
高齢者の市中肺炎における入院期間長期化の要因を分析するために、Y医院(19床の診療所)における高齢の肺炎患者を対象に、(1)年齢、(2)肺炎以外の病名、(3)入院時の移動能力、(4)肺炎の重症度、(5)検査・治療、(6)入院期間などについて調査した。Y医院では、肺炎の検査・治療が標準化されており、治療はペントシリン1gを1日2回、点滴により7日間投与されると同時に、ミノマイシン4錠を1日2回、内服で5日間投与される。また、退院の判断基準は、炎症所見および胸部レントゲン写真上の陰影が消失していることである。 2003年における肺炎の入院患者数は8名であった。1995年から2002年までの期間では、一年間の入院患者数が最も少ない年で14名、最も多い年で38名であった。例年に比べて昨年の入院患者数が減少したのは、肺炎に罹患する患者が少なかったことに加えて、昨年8月頃から重症の肺炎患者以外は通院治療に切り替えたことなどの影響がある。その結果、平成2002〜2003年における高齢の市中肺炎患者の調査総数は30名であった。その中で、肺炎以外に病気が認められなかった患者(A群)は20名で、その平均入院期間は約10日であった。20名の平均年齢は72.8歳で、入院時の移動能力は全員が自力での歩行が可能であった。肺炎の重症度は、軽症の患者が17名で、残り3名が中等症であった。一方、慢性疾患などの既往症を持つ肺炎患者(B群)は10名で、その平均入院期間は約17日であった。10名の平均年齢は71.2歳で、入院時の移動能力は全員が自力での歩行が可能であった。肺炎の重症度は全員が軽症であった。治療薬の延長あるいは変更が認められた患者は、A群では20名中1名、B群では10名中3名であった。 以上の結果から、高齢者の市中肺炎における入院期間長期化の要因には、慢性疾患の有無が関連していることが明らかになった。Fineら(1993)は、肺炎患者の入院期間の差をもたらす要因について調査し、重症度が高ければ高いほど入院期間が長くなることを明らかにした。今回の調査では、A群(20名)の中で、中等症の肺炎患者3名の平均入院期間は約13日で、軽症の肺炎患者17名のそれは約10日であった。症例数が少ないながらもFineらの結果と一致する傾向が認められた。
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