研究課題
〔研究の目的〕近年、エビデンスに基づく看護ケアへの関心が高まっており、新たな知見のもとに従来と異なる新しい考えかたや方法が支持され導入されており、それが広く普及することは看護の質の向上に寄与するものである。しかしながら、容易に普及するアイディアや技術もあれば、そうでないものもある。本研究では、革新的な看護ケア技術に焦点をあてて、普及に影響を及ぼす因子を探求するものである。〔研究方法〕まず看護専門家への面接を通して、看護師が革新的と認識している技術を抽出し、一方で技術の普及に影響を及ぼすと考えられる個人的要因及び組織的要因について、看護管理者等への個人面接とフォーカスグループインタビューを通して抽出した。予備調査で革新的技術の特定と影響要因の探求と特定を行い、普及実態とその影響要因を探求する質問紙を作成した。最終的には革新的看護技術の普及実態と影響要因の関係を探求した。根拠のある革新的看護技術は看護用具、アセスメントツールなどの「用具」、「行動様式」、「知識情報」に分類し、22項目を特定した。またその項目の普及の実態を知るために革新的技術の「採用」の程度を尋ねる尺度を用いた。普及への影響要因については、組織の革新性傾向と組織構造要因を用いた。〔結果と考察〕革新的看護技術の普及の実態は、知識獲得の段階、態度変容の段階、採用決定の段階、実行の段階のそれぞれへの回答傾向によって6つのパターンに分類された。パターンの違いについては、看護師の個人的な判断に加え病棟単位での決定に従うなど、普及の実態には組織的は判断の影響があると考えられた。普及への影響因子としての個人的要因に関する結果では、専門資格(認定看護師、糖尿病療養指導士、救急救命士、等)を有する者のほうが採用度が高い結果となった。また学会に所属していること、施設外研修の経験がある、研究発表の経験がある、専門雑誌を購読している者が高い採用度であった。看護部責任者の特性としては、新しい情報を採用している者、認定看護管理者資格を持つ管理者のスタッフほど高い採用度であったが、管理者の特性とスタッフの革新的看護技術採用度は関係が薄い結果となった。施設の規模では採用度の差はみとめられなかった。その他、病院機能評価を受けている組織、教育・研究機関を併設している組織、院内情報ネットワークを有している組織、インターネットを活用できる組織など、情報伝達機会の有無が革新的看護技術の採用度と関係していた。〔結論〕1.革新的看護技術の普及は6つのパターンが確認された。2.普及には専門的看護職の存在など採用を促進するチェンジエージェントの存在が関係していた。3.組織特性としては情報へのアクセスの程度が関係していた。4.普及に影響する組織革新性として、専門性志向と情報獲得への意欲などの組織文化的特質が明らかとなった。〔展望〕普及を促進するために、研究成果の実践への活用、情報の活用、組織文化の変革、管理者教育が必要である。
すべて その他
すべて 文献書誌 (5件)