医療事故、過誤の誘発には医療・看護体制などの組織的問題と、医療従事者個人の専門的知識・判断力などの能力が影響している。個人の能力については、教育と自発的学習の積み重ねによって高めることが可能である。本研究は、危険予測能力に注目し、その能力を高める教育プログラムを開発することが目的である。 本年度は、昨年度収集した医療事故・ニアミス事例をもとに危険な要素を含む臨床場面のペーパーシュミレーションを作成し、コンピュータシステムを用いた教材を試作した。 1.ペーパーシュミレーションの作成 昨年度収集した医療事故・ニアミス事例は大きく10のカテゴリーに分類することができた。各々のカテゴリーから代表的な事例を1つずつ選択し、ペーパーシュミレーションとして展開した。 ペーパーシュミレーションの作成にあたっては、危険予測を意識づけるために行動に結びつく意思決定のプロセスにおいて5つの条件場面を設定し、各々の場面に選択肢を設け、様々な状況が起こりうる可能性を含むように考慮した。 2.コンピュータを利用した教材の試作 ペーパーシュミレーションとして展開した事例のうち1例をCAI教材として試作した。教材としての評価のために、臨床実習経験の有る看護学部4年生1名と臨床実習経験の無い看護学部1年生1名の研究協力を依頼し、試作教材による実験学習をした。その結果、5つの場面に各々4つの選択肢を準備したが、学習者の思考の個別性に対応しきれていないことが明らかとなり、ペーパーシュミレーションの内容を再検討した。
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