研究課題
バーンアウトという概念が対人サービス職以外の職業においても使われ始め、Maslachらは一般職業人を対象としてバーンアウトを測定するMaslach Burnout Inventory-General Survey (MBI-GS) (1996)を開発している。研究代表者らはこのMBI-GSの日本版を作成し、病院勤務の職員を対象に心理測定学的特性を検討した。その結果、構成概念妥当性は示唆されたが、他職種・集団における交差妥当性の問題が残された。そこで、本研究の本調査に入る前に尺度の整備をすることが研究の第一段階であると考え、日本版MBI-GSの見直しを行った。一製品製造工場に勤務する全中間管理職者(n=696)を対象に内的妥当性として探索的因子分析と確認的因子分析を、外的妥当性として職場変数との関係を検討した。職場変数として、Karasekのthe Job Content Questionnaire (JCQ) (1985)からdemand及びcontrolを採用した。探索的因子分析では原版どおりの3因子:Exhaustion (Ex:疲弊感)、Cynicism (Cy:シニシズム)、Professional Efficacy (PE:職務効力感)構造が確認された。確認的因子分析でも3因子モデルが妥当と考えられたが、ExとCyの独立性について疑問が残った。職場変数との関係を共分散構造分析によって検討した結果、ExからCyへパスを描いたモデルでデータとの適合度が最も高くなった。職場変数であるdemandとcontrolはMBI-GSの下位尺度に対してそれぞれ異なったかたちで関係していた。従って、ExとCyの独立性が確認され、日本版MBI-GSの3構成概念が検証できた。先行研究と本研究の結果を併せ、日本版MBI-GSは実用的な尺度として使用可能であることが示唆された。以上の結果を得たため、看護職者のバーンアウトと医療事故との関連を検討するための調査票の作成を行った。現時点では、研究代表者の所属機関の倫理委員会へ申請、対象者の選定、など平成15年度に実施予定の本調査準備作業を行っている。