研究概要 |
本研究の目的は,わが国唯一の民間薬物依存リハビリ施設「ダルク」の中のひとつである,「茨城ダルク」のスタッフ,スタッフ研修生,および元スタッフを対象に継続的な面接を実施し,その看護学的分析を通して,対象者の回復過程における体験と認識の個別性を明らかにするとともに,共通性を探ることである。なお,茨城ダルクのスタッフおよびスタッフ研修生は,すべて一定期間,薬物の使用が止まっている薬物依存者である。 本研究は4年計画で実施するものであり,初年度である今年度は,2000年6月から2002年3月の間の全期間,もしくはその一部の期間に,「茨城ダルク」において,スタッフもしくはスタッフ研修生として在籍していた薬物依存者6名,および2002年4月以降に同施設にてスタッフ研修を開始した薬物依存者7名に,1〜4回の面接を実施した。1回あたりの面接時間は,1〜5.5時間であった。面接は,各対象者がダルクの内外の多くの人々と多様な社会関係を持ちながら,自分なりの「回復」や「社会復帰」について各々に追及し実現してゆく長期のプロセスを,各対象者の自由な表現を通して理解していくことを念頭において実施した。以上のとりくみにより,現段階においては,以下のような示唆が得られている。 1,対象者のうち3名は,現在,茨城ダルクを含めて全国各地のダルクで責任者の役割を担っている。これらの者は,施設を管理・運営していく上で直面する諸問題にとりくむことを,自己の回復過程にとって有益なものと受け止めていた。 2,対象者のうち3名は,本年度中にスリップ(薬物の再使用)をし,かつ,スリップ後にも面接を実施できた。これらの者は,スリップについて様々な感情を持ちながらも,これを自己の回復過程にとって有益なものと受け止めていた。
|