研究概要 |
本研究の目的は,わが国唯一の民間薬物依存リハビリ施設「ダルク」のスタッフ,スタッフ研修生,および元スタッフを対象に継続的な面接を実施し,その看護学的分析を通して,対象者の回復過程における体験と認識の個別性を明らかにするとともに,共通性を探ることである。 本研究は,4年計画で実施するものであり,平成16年3月現在,継続して面接を実施しているケースは,20名である。内訳は,施設長もしくは施設責任者が3名,スタッフもしくはスタッフ研修生が13名,ダルクに入寮しつつアルバイトプログラムを行っている者が2名、ダルクを退寮後,時おりダルクに来所しながら就労している者が1名であり,面接を実施したダルクは,「茨城ダルク」を中心として,全国6施設に及んだ。他,平成15年6月当初は対象者であったが,スリップ(薬物の再使用)を経て退寮したため,対象者から除外した者も若干名いる。 面接は,各対象者がダルクの内外の多くの人々と多様な社会関係を持ちつつ,「回復」や「社会復帰」について各々に追求し実現していく長期のプロセスを各対象者の自由な表現を通して理解していくことを念頭に置いて実施した。 現在,各対象者への面接(2〜4ヶ月に1回)を継続しつつ,以下の観点から分析を進めているところである。 (1)薬を使いたい認識と薬を使いたくない認識とが,どのように調和的に解決されているか。 (2)一薬物依存者であることと,薬物依存者への援助者であることがどのように両立されているか。 (3)薬なしでは何も楽しめない状態から,薬を使わなくても何かを楽しめる状態に移行する過程に何があるか。 (4)薬を使わないことで何をめざすかを重視する立場と,薬を使わないことそのものを重視する立場の違いの根本は何か。 (5)将来的なことは考えない(考えないようにする)状態から,将来に夢を持てる状態に移行する過程に何があるか。
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