研究概要 |
本研究は薬物依存症者の回復過程における体験と認識を,個別事例へのインタビューの継続的実施により明らかにし、その事例間での共通性と相違性を分析して、回復過程における法則性について考察するものである。それによって、薬物依存症者への看護実践に有用な知見を得ることをめざしている。 我が国唯一の薬物依存症者リハビリ施設である"ダルク"を研究場所としている。ダルクは薬物の使用が一定期間以上止まっている薬物依存症者自身が,薬物依存症者のケアを行っている施設である。そのため、ケアの担い手と受け手の立場が逆になることもある。研究者は、本研究開始(平成14年度)に先立って、2年間"ダルク"のスタッフ数名を対象としたインタビューを継続してきており、本研究開始後、ひき続き現在に至るまで継続している事例も5名おり,5年間に及ぶインタビューの記録の分析を進めているところである。この5名を含めて研究対象者たちは、研究期間中にそれぞれに多様な体験をしてきている。新たにダルク(現在全国で約30ヶ所に及ぶ)を立ちあげた者,ダルクのスタッフを経て、就職した者,スリップ(薬の再使用)を経てプログラムをやり直して施設責任者となった者,ダルクの責任者を経て看護学校へ進学した者等,生活と労働の場や自己の立場の変化と連動してクリーンタイムを積み重ね,回復していっている者がいる。その一方では、ダルクを飛び出して行方不明中の者もいる。新たに,いくつかの施設への入所体験を経て、スタッフ業務をはじめたスタッフ研修生にもインタビューを開始してきている。 本年度はフィールドワークに終始し、考察や論文作成に向けてのとりくみができなかったので、来年度は分析と論文執筆に充分な時間をかけていくようにしたい。
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