平成12年度から継続的に行っている看護部長へのインタビューから48の「看護部長として最も意思決定が困難であった倫理課題」についての事例が得られた。それを1)単独で意志決定権があった場合、2)事務長や院長等と共に意思決定権があった場合、3)意志決定権がなかった場合、4)意志決定権に関係しない場合の4種類に分類し、1)、2)、3)の状況下でどのような意思決定が行われたのかを明らかにした。まず、1)には、看護部内の資源配分や看護職員への対処などに関する事例が分類されていた。そして、単独で意思決定権があっても、必ずしも納得してその意思決定を受け入れているわけではなく、意思決定を先延ばしにしたり、時間をかけて周囲を固めていったり、自問自答を繰り返すなどの対応がとられていることが明らかになった。2)には、医療ミスの開示をめぐる事例や、法律や組織がかかわる事例が分類されていた。行った意思決定に関しては、納得して受入れることもあれば、道徳的苦悩に陥り、取り合えず意見を述べたり、機会が来るのを待ったり、妥協したり、意思決定を先延ばしにしたり、自問自答を繰り返したりといった対応が明らかになった。3)には、医師を主とする他職種の態度に関する事例、労使協定に関する事例、医師との意見の相違に関する事例が分類されていた。また、取合えず意見を述べる、解決法を創造する、強硬手段に出る、現状に耐える、機会が来るのを待つ、あきらめて受入れるなどの対応が明らかになった。そして、これらの事例をまとめ、「看護部長の倫理的意思決定プロセスモデル」の構築を行った。平成15年度には、このモデルをさらに洗練する予定である。
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