平成15年度は、臨床経験3年目の看護師を対象に、模擬患者(SP)と対応する看護実践場面を通して観察技術の教育の有無と看護実践との関連を検討した。 方法:被験者は臨床経験3年目の看護師10名で、観察技術の教育を行った学習者5名(男性1名、女性4名)と未学習者5名(男性1名、女性4名)とした。実験日は平成16年2月1日、8日の2日間とした。学習者は2月1日に教育プログラムに基づき、観察の重要性や「生活の援助、診療に伴う援助に関する情報収集の視点」と「アセスメントツールとその内容例」を再学習した。また、2月8日は被験者10名全員にSPを活用した看護実践を行ってもらい、被験者およびSPに録画や録音の同意を得て、ビデオ録画と実践後に観察項目と患者アセスメントなどについてインタビューを行った。 結果:SPと対応した看護実践場面の録画から看護師の視線がいったり触れたりしたと見られた項目の内、患者には全員の視線がいっていたが、その他環境への視線は8/10名がなかった。対応後の患者アセスメントは、学習者は(1)痛みに対すること、(2)SPの個別性から考えたこと、(3)実際の観察から今後何を考えなければいけないかを情報を得ながら明らかにする、(4)今必要なことはなにか、があげられた。また、学習者は、教育内容を実践の中に活用したことから、患者を具体的に観察するようになり、重要な観察項目が見落としがちであることに気づいた。未学習は、(1)一般論的であり、(2)推論で具体性がないものであった。 考察:観察技術の再教育を受けた看護師は、看護実践と観察;情報収集を意識化し多方面から具体的な情報収集を行い看護実践につなげている。内容は、今までより広がりをもち、患者の個別性に適した看護実践に近づけられている。このように、観察技術の教育を具体的内容で行うことは、観察能力が高まり看護の質の向上へと繋がる。
|