社会復帰している長期脊髄損傷者6名を被験者にして、生活習慣病の予防を目指した食事指導を実施するために、肥満関連因子の測定、食事調査、エネルギーと無機質の消化吸収試験を行った。これらの結果に基づいて夕食時の主食を玄米にする食事介入・食事の自己管理を指導し、その実践状況の確認を問診で定期的に行い、その介入前後の肥満関連因子の変動から食事介入の効果を検討した。被験者は、各項目の測定結果の特徴から、50歳以下と以上の2グループに3名ずつ分けられる。BMIは、50歳以下では「普通」であるが、50歳以上では「肥満」へと移行していた。内臓脂肪と皮下脂肪の面積比の平均値は、50歳以下が0.6、50歳以上が1.4であり、全員が内臓脂肪型肥満であった。空腹時の血糖値は、50歳以下では正常範囲内であったが、50歳以上で2名が高血糖を示した。高インスリン血症が50歳以下で1名、50歳以上で2名であった。高脂血症は、50歳以下で2名、50歳以上では全員であった。陰膳による50歳以下と以上の1日あたりの栄養素摂取量は、エネルギーが2190kcalと1698kcal、たんぱく質が72.7gと66.9g、脂質が65.3gと41.9gであった。被験者全員が、たんぱく質と食塩の摂取量は適切であったが、コレステロールの摂取量は300mgを超えていた。また、食物繊維、ビタミンE、一部の無機質、多価不飽和脂肪酸の摂取量が所要量よりも低かった。消化吸収試験の結果は、エネルギー吸収率が50歳以下で約79%、50歳以上で約86%であった。被験者の無機質の吸収率は、ナトリウムとカリウムを除いて一般の人より低かった。50歳以上の被験者への食事の介入により、摂取エネルギーが約200kcal/日低下し、コレステロールの摂取が適正化した。約8ヶ月の介入期間中の食事は適切に自己管理されていた。介入後に肝機能と血中の脂質成分の値がより適正化しており、食事への介入により、生活習慣病が予防できる可能性が示された。
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