研究概要 |
2003年度に入り,引き続き障害児の在宅ケアの実際についてインタビューを行っている。その中で1組の両親が「今までも何も変わらなかったから,話をしても無駄ではないか」と話されたことがあった。その患児は在宅酸素療法を行っていたが,ケアを行っている母親がひと時も子どもから目が離せない状況であることや,肺炎などで入院しても親身になって診てもらえないことの不満,社会資源などはその場所へ出向いて手続きをしなければならないため,情報が入り難く,利用し難いことを訴えていた。また,ある筋疾患患児の両親は,患児の病状が進行して車椅子生活となり,今の生活を楽しませてあげたいと願っているにもかかわらず,医療側と家族側との思いが一致せず不安を抱えていた。両親は子どものために長期間援助をするという役割を受け入れるが,在宅ケアの困難さを経験するほどに葛藤する。こうした子どもの在宅ケアは医療や福祉,教育での多くの職種や部門との連携の上に成り立つ。子どもの状況は多様であるため,その子どもの生活の困難さによって支援方法を考え,患児・家族のQOLを高める援助が必要であると思われた。 これらの結果は,国内外の学会で実態を発表した。10月には,アイスランド共和国レイキャビクで開催されたThe Third Nordic Conference of NoSB, Children of Today : Care Without Wallsで母親が在宅でどのように子どもの障害を認識したかということを発表したが,日本での障害児に対する在宅ケアのサポートについて関心が寄せられた。 インタビューで問題と思われたことは,小児科医が毎月行っているカンファレンスに参加して現状を訴え,解決方法を考えている。医師にとっても貴重な情報であり,今後の医学教育にも生かしたいということであった。家族とは,その後も関わりをもっているが,支援の方向性が見えてきている。
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