わが国でも、数年前より家族立ち会い分娩が増加しつつある。夫立ち会い分娩の効果としては、産婦や夫への分娩中および産後の心理的側面・育児参加・夫婦関係などへの影響が報告されているが、上の子を含めた家族立ち会い分娩が分娩結果に及ぼす影響を詳細に調べた報告は極めて少ない。この研究は、女性のリプロダクティブヘルス/ライツに最も影響すると考えられる産痛緩和ケアや出産時のケアの向上を図ることを目的に、母親の血液・胎児由来の羊水・臍帯血などの生化学的成分の分析を交えて、分娩時の家族立ち会いの有無が産婦および胎児に及ぼす客観的・主観的影響を解明することである。以下、本年度の研究実績を記す。 目的:初産婦と経産婦に分けて、家族立ち会い分娩の推移と家族立ち会い分娩が分娩結果を含む周産期要因に及ぼす影響を明らかにする。 対象と方法:対象は平成8年から平成12年までに北海道の女性クリニック(夫および夫以外の立ち会い分娩を積極的に行っている施設)で出産した家族立ち会い分娩者609名(立ち会い群)、同時期に出産した非家族立ち会い分娩者402名(コントロール群)である。調査内容は対象の個人的背景・妊娠・分娩・産褥・新生児の異常とその処置で、同意の得られた対象の病歴から読み取り調査を行い、初産婦・経産婦に分けて統計分析を行った。 結果:立ち会い群は非立ち会い群よりも、妊娠中の異常や妊娠中の入院が有意に高率であったにも関わらず、分娩時の異常や新生児の異常には両群で差はなく、立ち会いにより産婦のリラックスなどが得られている結果であると考えられた。また、経産婦では分娩時の処置が非立ち会い群で有意に少なく、家族が立ち会うことで分娩時の処置の適応がより厳格になると考えられた。
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