1)本年度の調査実績としては、 京都市の病院において、継続調査を実施した。調査は2004年9月から開始し2005年1月末まで続いた。 承諾が得られた対象は60人で、そのうち分析可能なデータが取得できたのは50人であった。前年度のデータ60人と合わせて、分析・報告書作成中である。 2)本年度のデータ分析としては、 産婦60人(初産婦26人、経産婦34人)の母体血・臍帯血のコルチゾールと分娩結果・主観的ストレスの関連性を調べた。コルチゾール値は、時期別比較では初産・経産ともに分娩期に有意に上昇し、産後1日には有意に減少した。初産・経産別比較では妊娠期と産褥期のコルチゾール値に差はなかったが、分娩期は初産婦が有意に高値を示した。また、臍帯血でも初産と経産で差が見られ、初産婦はコルチゾール値で高値、pH値で低値を示し、いずれも経産婦よりも不良な値であった。主観的ストレス指標とコルチゾール値の相関では、産痛強度は初産・経産ともに正の相関を示し、特に経産婦では有意な相関が得られた。不安度及び疲労度は初産・経産ともにコルチゾール値とは関連性がなかった。産科異常との関連では、異常有群(胎児仮死・臍帯巻絡・微弱陣痛・前早期破水)は異常無群よりも、臍帯血pO_2は低値、臍帯血コルチゾール値は高値で、いずれも有意差が認められた。 以上、初産婦は経産婦よりも客観的ストレス指標は有意に高くなり、臍帯血ガス値も有意に不良であった。特に児に関連する産科異常群でその傾向が大きいことから、分娩時異常の発生を予防することが重要であることが示唆された。
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