この研究は、女性のリプロダクティブヘルス/ライツに最も影響すると考えられる産痛緩和ケアや出産時ケアの向上を図ることを目的に、家族立ち会いの有無が産婦および胎児に及ぼす影響を解明することである。 1.平成14年度は、北海道のクリニックで家族立ち会い分娩した産婦(609名)と非家族立ち会い分娩群の産婦(402名)の妊娠・分娩・新生児・産褥結果を病歴および助産記録の読み取り調査を行った。家族立ち会い分娩群では妊娠異常や入院加療者が有意に多いことから、立ち会い分娩を選択する一要因として、妊娠や分娩への心配があると推測された。家族立ち会い分娩の有無と分娩結果との関係では、立ち会い分娩群は妊娠異常や分娩異常が高率であるにもかかわらず、分娩時の処置率には有意差はなかったことから、立会人の存在は分娩時の医療介入をより厳格に適応させるように機能することが示唆された。 2.平成15年から16年度は、大阪府および京都府の病院において、家族立ち会い分娩の有無による客観的ストレスと主観的ストレスの関連性を調べるために、産婦のストレスを客観的評価(コルチゾール・βエンドルフィン血液ガスなど)と主観的評価(STAI・産痛強度・疲労度)の両方で測定し、両評価の関連性を分析した。コルチゾール値とβエンドルフィン値ともに、家族立会い群(88人)と非立会い群(19人)において妊娠期・分娩期・産褥期で差はなかったが、初産婦・経産婦別にみると、初産婦の非立会い群でいずれも最も高値であることから、この群では和痛ケアや精神的慰安など、よりきめ細やかなケアの実施が重要である。また、非立会い群は立会い群よりも、疲労の訴え数は多く、不安が強く、陣痛強度も強かった。特に初産婦の非立会い群はその傾向が極めて顕著であったことから、特に初産婦においては、家族立ち会い分娩が行われるように妊娠中から充分に家族や産婦に対する予期的指導を行うことが重要であると考えられた。
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