14年度は病床数162床の脳神経系外科・リハビリテーションを中心診療とする財団法人操風会岡山旭東病院看護部をフィールドに、3名の看護リスクマネジャーと看護部長との共同の元で、コンピュータに入力された看護師による事故・ヒヤリハット報告書を分析した。6月〜12月(7ヶ月間)の102件の内、ヒヤリハットを除く4病棟の3大事故項目(投薬・処方関係、ドレーン等チューブ管理、療養上の世話)に限定した89件を分析した。多発時期は休暇で人員構成が減少する9月であり、疾病特性を反映したと考えられる療養上の世話が3割と多くを占めた。発生時間は事故項目の性質、看護管理上の特徴が反映した集中、煩雑化する時間にみられた。今年度から入力されたデータ項目では事故防止の根本原因を分析できないことが明らかとなり、危険度の高いケースを軸に濃密な事例分析が必要であることを確認した。特に転倒転落についてはすでに当病院で取り組んできた専門委員が14年度1年間の発生件数162件について検討して、患者側要因に対して環境要因30%を抽出し、「環境チェックリスト」を作成して取り組むこととなり、事故発生率30%削減を目標とする方向が定まった。後半にはメタ認知支援の面接をスタートさせたが、積極的な参加者が少ないことから、今年度はスタッフ研修に「リスク感性を高め、事故の予測と予防対策を計画実践できる」を目標に、23名の研修者に、3名の研修担当者と企画して、看護の質向上にリスクマネジメントの観点からリスク感性を持つスタッフ指導者層を育てることとした。 一方、岡山リスクマネジメント研究会を持ち、市内のリスクマネジャー、看護教員らと継続的に取り組んできている事故体験看護者の面接調査について、14年度はさらに14名の調査データと前回の7事例を加えて比較分析して、「看護者の医療事故からの学習構造」を明らかにした。事故との直面から、本研究の面接による回想までの「事故との対峙」は「事故に伴う感情体験」「事故責任の自覚と行動」「事故の事実を再編する」の3カテゴリーと19サブカテゴリーで構成されており、この結果を日本看護研究学会近畿・北陸/中国・四国地方会(3月16日)で発表した。今後はさらに理論的発展に向けて研究する予定である。
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