15年度は研究フィールドである脳神経専門病院看護部門のリスクマネジャー2名(前年度3名)と看護部長の3名で定期的な検討会を持った。リスクマネジャーナースによる「転倒転落防止対策」の環境チェック効果についてヒヤリハット報告及び集計データを元に分析し方向性を検討。委員会による4〜9月のデータによると、患者による「ベットからの移動」「排泄行動」による発生が多く、病室内・ベットサイドが58%で、トイレは12%であり、その事故の性質は転落(滑り落ち)が49%であった。看護者側の体制は、観察不足・環境不備・説明不足が主で、発生時刻は8時・12時・17時と、看護者の勤務交代時で患者の食後の排泄行動が生じる業務の煩雑化する時間帯であることから、組織的な工夫が必要と考えられた。7月の2回に亘る院内研修会では、28名の参加者により、合計12事例の事故体験をグループサポートによる回想を通した事故状況のメタ認知覚醒を試み、その効果についての追跡方法を検討している。尚、当病院では12月、病棟増築に伴う移動により、新たな体制の中でのリスクマネジメントが課題となり、継続的に検討を進めている。 一方、岡山リスクマネジメント研究会では、事故発生の予見について分析を重ねてきた。予見は看護者の労働環境のなかで多様に攪乱されていることが明らかであった。1月20日、Dr.JanetM.Corriganの広島での講演で、米国事故予防に看護職者の教育の課題が報告され、当研究会のこれまでの成果からも、事故事例の体験から学習し直すことが予防になると示唆された。そこで、次年度は研究会を一部公開にし、「事故を語る場」づくりと「リスクマネジャーの当事者サポート技術開発」のための研究会を立ち上げることとした。
|