15年度の研究の目的は、14年度の継続でデータ分析を行ない、行動障害へのケア方法論を抽出し、ケアの熟練者からの助言や知見を取り入れ、行動障害を予防、緩和するためのケア方法論を検討することであった。 1.研究方法 14年度は2ヶ所のグループホームにおいて、ケア提供者5名(男性2名、女性3名)と、主に暴言、暴力、徘徊、幻視がある痴呆性高齢者4名(女性)を対象にケア提供者へのインタビューとケア提供者による痴呆性高齢者への関わりの場面の観察によりデータを収集し、行動障害の緩和、予防のための働きかけについてカテゴリーを抽出した。15年度は、この抽出されたカテゴリーについてさらに分析を進め、行なわれているケア方法を把握した。2ヶ所のグループホームと1ヶ所の老人保健施設にてこれらのケア方法の適用性について検討した。 2.研究結果 質的データの分析の結果、行動障害への対応に直接的に関係するものと、日常的な関わりに関するものの2つに大別し、以下のようなカテゴリーが抽出された(カテゴリーは<>、概念は「」で示す)。行動障害への対応について、ケア提供者は、<関わりにより気分を変える/悶々とした気持ちを吹っ切る>ために、「1対1でその場で対応」していた。ケア提供者は、<よく起こる行動の特徴を捉える>ために、「普段のパターンをよく把握」し、<対応に失敗した時は原因を探り>、状態が複雑な場合や入所して間もなく、行動パターンが見えない場合は、<高齢者の様子をよく観察>していた。上記の結果をケア方法としてまとめ、施設のスタッフにフィードバックしたところ、「関わりが失敗した時の状況を見直すことができてよい」、「高齢者がどういう時にどう対応することがよいのかなどが分かってよい」などの反応が得られた。このようなスタッフから出た言葉や反応などに基づいて再度、カテゴリーの修正・追加を行ない、行動障害を予防、緩和するためのケア方法としてまとめなおし、施設における適用性を検討した。
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