本研究の目的は、家庭的な小規模ケアの場で痴呆性高齢者のケアの熟練者が行なっている行動障害の緩和と予防的な働きかけの実態を質的帰納研究に基づいて明らかにし、痴呆性高齢者の行動障害へのケア方法論の開発を行なうものである。 1.行動障害への関わりの実態 熟練したケア提供者による痴呆性高齢者の行動障害への関わりの実態を、2箇所のグループホームにおける熟練者5名に対して参加観察とインタビュウにより明らかにした。その結果、カテゴリーは、A.行動障害への対応に直接的に働きかけるものと、B.日常的な関わりに関するものとの、大きく2つに分類することができた。 Aには、<関わりにより気分を変える>、<よく起こる行動の特徴を捉える>、<対応に失敗した時は原因を探る>、<高齢者の傾向・パターンが見えない時の様子観察>が含まれていた。Bには、<コミュニケーション>、<関わり>、<体の動き>、<環境>が含まれていた。分類AとBは、実際は切り離されたものではなく連続線上にあり、Bがうまく行なわれていることは、行動障害を予防し、悪化を防ぐことにつながっていた。痴呆性高齢者の行動障害への熟練したケアの実態を表すカテゴリーは、その妥当性を高めるためいくつかの段階の検討を加え、修正版を作成した。これにより、痴呆性高齢者の行動障害への関わりの実態に基づく全体像をある程度表すことができた。 2.ケア方法(ケアガイド)の開発 ケアガイド作成にあたっては、痴呆性高齢者へのケア提供者の関わりについてのデータを分析し、カテゴリーを抽出していく過程で、行動障害がみられる状況毎にいくつかの行為や関わりからなるケアの流れとまとまりがあること、ケア提供者の行為や関わりはそれを導くケア提供者の何らかの判断があり行なわれていることが明らかになり、これらを活かしたケアガイドを作成した。 ケアガイドは妥当性を高めるための検討の過程を経て作成した。さらに作成したケアガイドの適用性をさまざまな場におけるケア提供者からの反応を得て検討し、必要な修正を行なうことができた。
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