欧米において、心臓移植は末期循環器不全の状態にある対象者に対する根治的治療法として確立されている。しかし、日本においては「臓器移植に関する法律」が施行された1997年以降、現在までに17例の心臓移植が実施されたのみである。そのため、多くの心臓移植の適応者または希望者は海外に渡航して心臓移植を受けなければならないのが現実である。 本研究の目的は海外において心臓移植を受け、帰国した心臓移植レシピエントの心理社会的問題を明らかにすることである。研究の対象者は20人のレシピエントおよびその家族であり、半構成的面接法にてインタビューを行い、彼等の体験についての感情を語ってもらった。 その結果、海外にて心臓移植を受けるレシピエントとその家族は、国内で移植を受ける場合よりも困難なことが多く語られた。その要因は「移植医療へのアクセシビリティーの低さ」、「外国語によるコミュニケーションでの不便さ」、「滞在中の宿泊施設の確保がむずかしさ」、「外来通院とその費用の負担感」、「外来通院のための宿泊施設の費用の負担感」などが挙げられた。また、レシピエントとその家族は移植医、移植コーデイネーター、看護師、そしてボランティアからのサポートを受けていた。ある対象者は個人または非鋭利団体から募金を受けて渡航していたが、感謝の念と同時に心理的負担感も感じている対象者もみられた。 以上のことから、看護ケアとして必要なことは、レシピエントとその家族の持つニーズをアセスメントし、彼等の問題点を解決するために医療チーム内の調整を行うことも重要となることが示唆された。
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