1.文献検討 直腸癌肛門括約筋温存術後の障害を如何に軽減するかを重視した治療方法の検討重ねられているが、術後排便障害を評価する指標は、10余年前と変化なく、排便回数や、soilingの程度、もしくは肛門内圧測定によって得られた生理学的指標がほとんどである。排便障害を持ちながらの生活の詳細な実態は、いまだ報告されていない。また、直腸癌肛門括約筋温存術後の排便障害がQOLの低下に影響していることの報告はあるが、その障害を軽減または予防する看護支援方法、および看護支援の効果に関する知見はほとんど得られていない。 2.術後排便障害の症状と、日常生活上の困難感についての実態調査 直腸癌肛門括約筋温存術後の排便障害の症状は、対象によりその程度は異なるが、退院直後から1-3ヶ月がもっともシビアであり、変化した排便機能に自ら驚愕し、普段の生活はこの変化した「排便」に振り回されていた。詳細な排便状況を調査してみると、従来報告されている排便回数よりもはるかに実際にトイレに通う回数は多いこと、またその回数を記憶して回答するのは困難で、記憶に頼る回答は暖昧なことがわかった。 さらに、QOLは単なる排便回数だけでなく、残便感やsoilingなど多角的に評価する必要があることが明確となった。 3.排便障害の症状の変化に影響しうる要因の探索 術後生じた排便障害に対して、様々な生活上の工夫がされていた。その工夫のほとんどは、術後自ら排便障害のある生活を体験してから、自ら見出した方法がほとんどであった。ウォッシュレットの利用、および処方された緩下剤や整腸剤の内服調整、刺激物の飲食調整などが、効果的な生活上の調整であると思われた。
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