平成14年度は、プログラム開発の基礎となるデータ収集を行った。すなわち、高次脳機能障害を有する人は生活行動上どのような特徴を有しているか、それに対してどのような対応がなされているか、その実態を知ることを目的に、看護者面接、文献分析、参加観察の3つの方法を用いてデータ収集を行った。 看護者面接では2つのリハビリテーション専門病院から5年以上勤務経験があり、研究協力への承諾の得られた看護者8名に高次脳機能障害を有する人の看護体験についてインタビューを実施した。文献分析では国内では医学中央雑誌から「高次脳機能障害」「失認」「失行」「半側空間無視」「半側無視」を、国外についてはMEDLINEから「Unilateral Neglect」「Perceptual Dysfunction」「Cognitive Dysfunction」「apraxia」「agnosia」をキーワードに検索し、これらの症状がもたらす日常生活上の特徴とそれへの対応ができるだけ具体的に記載されていることを基準にのべ41文献を分析の対象とした。参加観察ではリハビリテーション専門施設の回復期病棟において、半側無視があることを第一条件に患者を選定し、本人および家族の了解が得られた7名の食事、整容、移動、訓練場面など入院生活の様々な場面を8日間にわたって半日ずつ観察した。分析においては、7名のうち3名はすでに高次脳機能障害の影響が入院生活上は改善されており、また、1名は痴呆症状がみられたことから分析はこれら以外の3名分を対象とした。 3つの方法ともそれぞれ生活行動の特徴とそれに対する介入方法に焦点をあてて内容分析を行い、相互に比較しながら最終的に、生活行動上の特徴は「危険行動」「自発的な行動の低下」「粗雑な行動」「集中力を欠いた行動」「状況にそぐわない不適切な行動」「片側に偏位した不自然な姿勢」「左右いずれか片側を残す未完成な行動」「行為の手順や使い慣れたはずの物品(道具)の使用困難」「誤りを指摘しても修正が困難」「障害の無自覚/否定」「情緒的な混乱」の11カテゴリーに統合された。介入については「行動の誤り/障害の存在に気づかせる」「心理的安定を保つ」「誤り行動の防止・修正/正しい行動の遂行を促す」「不足する部分を補う」「残存能力を生かす」「安全を確保する」の6つのカテゴリーに統合された。 次年度はこれらをもとにケアプログラム案を作成し、その有効性を評価していく予定である。
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