平成14年度に看護者面接、文献調査、参加観察による高次脳機能障害による生活行動障害の特徴と介入方法の分析から作成した看護ケアプログラム案1を、平成15年度は熟練者評価による一次評価を受けて看護ケアプログラム案2に修正した。平成16年度は、それを2箇所のリハビリテーション施設に勤務する看護者、介護者に3週間試験活用してもらい、その後、活用状況、結果、実践適用可能性、有用性などについて無記名のアンケートによる評価を依頼した。 その結果、本ケアプログラムは、看護者の実践的思考に沿った構成であること、看護実践にアプローチの視点および具体的手がかりを導いていること、見やすくわかりやすいこと、によって実践適用が可能であり、さらに、実践行為が意味づけられる、言語化できる、新たな知見が獲得できる、高次脳機能障害に対する理解と関心を深める点で、看護者自身の自己充実、自己啓発にもつながり、看護支援の道具として有用性が高いと判断された。 看護者のキャリア別にみると、若手群とベテラン群は、全体的に役立ち度、有用性の評価においてより高い評価をしていた。それに対して、中堅群では、中程度に評価する割合のほうが高かった。有用であるとする評価の理由は、それぞれのキャリアによって異なり、意味づけが異なることが示唆された。 看護・介護の職種別にみると、活用の仕方では、介護者の方が学習資源としての参考であるのに対し、看護者はケアプラン作成やチームでの共有のためと、より具体的に実践に取り入れた活用の仕方で、有用と判断する理由では、介護者が新たな知見や方法を得られたからという理由が多いのに対し、看護者にとっては自己点検・確認など多彩な意味合いをもつものであった。また、コア介入の項目別の活用度では、介護者は直接的介入を、看護者は行動修正のための基盤となる感情や認識に働きかける介入をそれぞれ他群より多く活用していた。 以上の結果から本プログラムは職種やキャリアを超えて幅広い活用可能性を示唆しているといえ、有用な看護支援の道具として、全体としての看護の質を保証していくことにつながると考えられた。今後、本プログラムによる患者行動の変化を科学的に実証することが課題として残されている。
|