研究概要 |
18世紀中頃における剛体の回転運動の理論をめぐる,ダランベール,オイラー,クレーロー、ヨハンおよびダニエル・ベルヌーイらのアプローチを比較検討した.とくに1740年代にパリおよびベルリン科学アカデミーの紀要を舞台になされた,回転する管の中の物体の運動をめぐる議論から,遠心力と回転座標系の概念,直交座標系と極座標系といった座標系の概念の成立過程を考察した. さらに1750年代に発表されたレオンハルト・オイラーの剛体の回転運動に関する2つの論文「物体の力学的概念に関する探究」,「変化し得る軸の周りの剛体の回転運動について」を中心に,彼の剛体運動の理論を検討した.オイラーは,剛体の運動を重心の運動と,重心の周りの回転運動に分離し,後者を扱うに際しては,各構成要素に対して回転運動の角速度に関する運動方程式を求めることによって論じている.その考察では全角運動量と慣性モーメント,慣性主軸の概念が用いられ,後の慣性テンソルが運動方程式の中に現われていた. このようなオイラー方法は,ダランベールやベルヌーイらのものとはまったく異なる斬新なものであり,代数的徴積分を駆使した点も相まって,近代的な剛体運動の理論の出発点とみなされている.次年度では,この方法が一般化され体系化的に展開されている『固体もしくは剛体の運動の理論』の考察を進める予定である.
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