研究概要 |
初年度に続き剛体の運動に関する理論の検討を1750年代まで進め,オイラーがいわゆる剛体の「オイラー方程式」を発表した晩年の大著『剛体の運動理論』(1765年刊行)の検討を行った.この著作において,オイラーは剛体の運動に関する体系的な理論を構築したことが知られており,共同研究として読解を継続している.さらに運動方程式および力の概念をめぐる論考「力学の新原理の発見」および「物体の力学的知識に関する研究」についても読解を始めた. オイラーにおける運動方程式の定式化,とくに直交座標系および極座標系における定式化,そして剛体の運動における間題への適用に関して考察した.伊藤は,運動方程式の係数をめぐる問題を中心に,オイラーにおける運動方程式の起源とガリレオの落下法則の関係,そしてその発展過程における尺度の問題を検討した.オイラーの運動方程式には,2という係数があることは従来から知られているが,その起源が,加速運動における速度の尺度をガリレイの落下法則に求めたことに関係していることを考察した.中田は.1840年代において,オイラーが剛体の運動に運動方程式を具体的に適用する際に生じた数学的手法の転換に関して検討した.従来,物体の運動を論じる際には物体の運動方向と垂直方向に力を分解して幾何学的に考察されていたが,オイラーは1840年代の剛体の運動を扱った論文において,この従来の方法を離れ,直交座標系さらには極座標系を設定し,買う座標軸に対して運動方程式を書き下す方法を案出したのである.
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