本年度の研究実施計画に基づき以下の諸点を中心に研究を予定通り遂行した。 1.第二次世界大戦以前の日本の科学研究費の実態解明 1870年代の東京大学設立時から1940年代までの日本における科学研究の遂行に当って、日本の諸機関はどのような資金的助成を行っていたのかについて文献調査を行った。用いた文献は、文部省、日本学術振興会の各種資料、民間団体である齋藤報恩会の「時報」および「事業年報」、助成財団資料センター発行の「助成財団」などである。その結果、1870年代末から20世紀初頭に掛けて欧米に留学した日本人研究者の旅費、滞在費は自己負担がかなり多く見られること。日本における本格的な研究助成は1920年代以降であり、この時期は国際的にみても今日につながる学会の成立や大学の組織整備など科学の制度化が進行している時期とほぼ一致することを見い出した。 2.外国諸機関から助成を得た日本人研究者の調査 医学・生命科学の進展に大きな影響を与えたと考えられている米国の研究財団であるロックフェラー財団、およびカーネギー財団の活動に関する文献調査を行った。前者では1920年代後半までは医学教育に力点を置いていたが、その後は精神医学等の臨床研究に助成を始めたこと、後者では医学者・生理学者の野口英世、実験動物学者の谷津直秀、植物学者の山内繁雄らに助成を行っていた証拠を得た。
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