体育教師をめざす学生を対象に、運動観察能力を向上させるための授業を実践し、実施意識や運動感覚意識などを記述させ、研究に必要な基礎資料を得た。その概要は、日本スポーツ教育学会において発表した。 運動観察では、単に人間の動きを外から見て視覚的情報を得るだけでなく、運動の構造や特性、状況などとともに総体的に把握する必要がある。さらにそれ以上に重要なのは、運動実施者の運動感覚能力(キネステーゼ)を理解することである。 当研究においては、実施者のキネステーゼを理解することを目標とした運動観察を学生に行わせるために、まず自分自身の運動実施感覚の変化を記述させた。この運動の自己観察は、自らの感覚の意識を類推(アナロゴン)として他者の動きの感覚を理解するという、他者の動きへの移入的共感能力の形成にとって不可欠のものである。 自分の動きを外形的に理解すると同時に内面的な運動感覚を把握する学習を通して、学生達は無意識下にある自らのキネステーゼを意識化(対象化)することができるようになった。これは運動を観察する能力が大幅に進歩したことを示すもので、このような能力の発達を位相的にまとめるのが本研究の主題である。 今年度は、その基礎として、自分の動きと感覚について研究を進めたものである。次年度は、他者の運動経過を観察させ、観察内容と運動技能レベル、運動習得過程などとの関係を調査するとともに、どのような指導が観察力の向上につながりうるのかなどについて調査を進める予定である。
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