本研究の目的は、骨格筋細動脈における流量依存性血管拡張機構について動脈系の部位差の観点より再検討し、さらにexercise hyperemia(運動性高血流)に及ぼす流量依存性血管拡張機構の関与について検討することである。 初年度の2002年度においては、これまで生体外標本として多数の研究で用いられてきた大腿薄筋を対象に、供給動脈から3Aレベルまでの細動脈生体外標本の流量依存性血管拡張作用について還流圧と還流量を制御しながら詳細に計測すること、さらに、ラット挙睾筋の生体内標本を用いて細動脈系の流量依存性血管拡張機構の計測システムを構築することを目的とした。 大腿薄筋からの細動脈の切り出し標本を用いた生体外の流量依存性血管拡張機構の検討では、現有の微小血管径計測システムに新たに微小流量測定装置を導入し、細動脈標本内への還流液の還流圧を0-160mmHgまで10mmHg毎に調節すると同時に流量も0-25μlの範囲で5μl毎に制御することが可能となった。また、生体顕微鏡に視野内の赤血球移動を検知し赤血球速度を算出する微小血管赤血球流速計測システムを組み合わせて、生体内標本を用いて流量依存性血管拡張機構について検討することが可能となった。現在までに、大腿薄筋細動脈の生体外標本を用いて流量依存性の血管拡張反応に血管の部位による差が認められること、挙睾筋の生体内標本を用いて流量依存性の血管拡張機構には血流速度の増大から血管径の増大が生ずるまでの遅延時間により血管拡張の機序に相違のある可能性のあることが定性的に明らかになった。 最終年度となる次年度においては、さらに実験の例数を増して、流量依存性血管拡張機構の部位依存性について定量的な検討を進める必要がある。
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