研究概要 |
本プログラムは,薬物乱用による心身および社会への影響と薬物乱用を助長する社会的影響に焦点を当てた複合プログラムである。また,(1)薬物の専門家である薬剤師,防犯の専門家である警察職員,教育の専門家である教師の三者が連携し,それぞれの専門性を生かした役割を分担して,生徒に働きかける,(2)社会学習理論に基づき,生徒と教師が演じるロールプレイングを通して,薬物乱用を誘う手口や誘惑に対処する方法等について生徒にモデリングさせるなどの特色を持つ。本研究では,10高校の1年生(1,291名)を実験群と対照群に分けた長期的な効果の検討を行った。本年度は主として,事前調査時の薬物乱用に対する意見についての質問の回答からハイリスクグループと非ハイリスクグループの二つに分けて,実験群と対照群におけるそれぞれの効果について分析した。評価指標は,(1)薬物乱用に関する知識(α=.746),(2)薬物乱用問題に関する態度(α=.853),(3)薬物乱用防止に関する自己効力感(α=.659),(4)薬物乱用防止のための社会的支援の認知(α=.784)の4指標である。その結果,実験群では,薬物乱用に対して肯定的な意見を持つハイリスクの生徒においては24ヶ月後の長期的効果が概ね認められ,注目された。なお,対照群とした従来型の講演方式による情報提供プログラムでは,正しい知識を習得することなどにおいて,男子のハイリスクグループを除いて一定の効果が期待できることが示唆された。
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