研究概要 |
本研究の目的は,小学生の歩行動作をバイオメカニクス的に計測して,その特徴を明らかするとともに,小学生の歩行動作の標準的動作パターン(平均歩行動作)を作成することであるが,本年度(初年度)には,小学校1〜6年生の男女の歩行動作をバイオメカニクス的に分析することにより,発達および性差という観点から小学生の歩行動作の特徴を明らかにすることを目的とした. 被験者は,小学校1年生から6年生までの児童228名(男子111名,女子117名)であり,体育館内に設置した歩行路において自由歩行を行なわせ,側方からVTRカメラで撮影した.被験者に対し「学校に来るときのように歩いて下さい」と伝え,視線は前方に向けるように指示した.また,光電管を用いて歩行速度をコントロールしたが,基準歩行速度を著しく逸脱する者はいなかった.本研究の結果では,学年とともに変化する項目がみられた. 学年とともに歩行速度,ステップ長,歩行比が大きくなったが青年(岡田,2000)より小さく,ステップ頻度は小さくなるが青年より大きかった.男子の方が女子より歩行比が大きく,ステップ頻度が小さかったことから,歩行速度の増加は,学年とともにステップ頻度依存からステップ長依存に変化し,男子の方が女子よりステップ長に依存していると考えられた.動作は,支持期において男子の方が女子より,小学生の方が青年より股関節が伸展位にあり,体幹および大腿が後傾位にあったことから,小学生の方が青年より身体を起こして歩行している傾向にあった.移動距離に対する力学的エネルギーの有効性には男女間および学年間に差がなく青年との差もなかったが,歩行速度に対する力学的エネルギーの有効性は学年とともに高くなり,小学生以降さらに力学的エネルギーの有効性が高くなると考えられた.
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