運動負荷を正弦波状に変化させ、それに対する生体反応の応答特性(反応の大きさ、反応の速さなど)から健康や体力を評価できないかと考えた。本研究では、生体反応として心拍数を用い、平成14年度は様々な体力レベルの者を対象として評価法の確立を、また平成15年度はトレーニングの効果を検討した。 1、評価法の確立 複数回繰り返した正弦波負荷運動時の心拍数を1秒間隔値に補完して、1周期分に加算平均し、それを心拍数の反応とした。正弦波負荷に対する最高及び最低心拍数を決定するために、それぞれに最適な2次関数を導出し、最高及び最低心拍数とした。反応の大きさを評価するために、得られた最高及び最低心拍数の差を求め、振幅とした。また、反応の速さを評価するために、最大負荷と最高心拍数、最低負荷と最低心拍数のそれぞれの時間差を求め、遅れ時間とした。 2、遅れ時間 遅れ時間は運動習慣の多い者ほど短く、また、最高値よりも最低値における遅れ時間の方が短かった。 3、振幅 振幅は運動習慣の多い者ほど大きかった。 4、トレーニング効果 運動習慣のある者(対照群)とない者(トレーニング群)を対象に週に平均2-3回程度のジョギングを6ヶ月間実践させた。トレーニング群の正弦波負荷テストによる心拍数の応答は、トレーニング以前に比べ、より大きく、かつより速くなり、トレーニング前には対照群と大きな差があったが、トレーニングによってその差は小さくなった。 以上の結果から、負荷変化に対する心拍数の応答特性は、よく運動する者ほど反応が大きく、かつ速いことが明らかとなった。このような応答特性は、最大酸素摂取量などの持久力指標よりも、運動習慣(時間や頻度)とより関係が強く、正弦波負荷テストによる心拍数の応答特性が健康・体力の新たな指標となりうる可能性が示唆された。
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