本年度は、総合型地域スポーツクラブの質的な経営の実態を明らかにすることを目的とした。具体的にはNPO法人格の取得を果たした先進事例といわれる3つのの総合型SCを対象に、各クラブがNPO法という新しい制度の登場に対し、誰がどのような意思決定方式を経て対応していったのか、その取得過程(NPO法人格の認知から取得に至るまでの過程)を記述した。そしてその中から、1)なぜそのような取得に向けた意思決定方式が採られたのか、2)法人化の検討に中心メンバーとして参加した関係者たちが法人化というクラブの変革にどのような期待を込めたのか、また、そのような期待や動機が生じたのはなぜなのか、を明らかにすることにより、クラブ関係者たちが抱く総合型SC観や将来ビジョン、NPO法(特定非営利活動促進法)の制定というクラブ経営をめぐる新しい制度的環境の変化に対して、法人格認証団体となったクラブがたどった意思決定過程に焦点を当てた。 3つのクラブへのインタビュー調査及び関連資料の収集により、総合型地域スポーツクラブにおける意思決定過程に共通するクラブ経営上の特徴が浮き彫りにされた。その第一は、クラブの重要な意思決定事項は、会員の僅か1%前後の運営役員によって進められ、他の会員には事後的報告がなされるのみというトップダウン型経営方式が採られていること、そしてそれは会員のクラブ経営に対する無関心さ故の対応であると考えられること。第二に、法人化過程においてスポーツ行政の意図が強く働いており、住民主導型経営への転換が困難であること、第三に、クラブの意思決定は当面の経営課題、特に経営資源の円滑な調達に関心が焦点化され、長期のビジョンや理念と照合しながらの議論がなされていないことなど、未だ脆弱な経営基盤にあることが明らかにされた。
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