平成14年度:「剣道の打突力が身体特に頭部予備頸部に及ぼす影響に関する基礎的研究」 1.目的:安全性の高い剣道具の開発や安全規格についての基礎的研究として、剣道選手の打突力(打撃・突き)が人体に対して及ぼす影響について明らかする目的で、自動車衝突実験用ダミー人形を用いて頭部・口部・頸部の力学量(加速度と荷重・モーメント)について計測した。 2.方法:1)打突条件;被験者は、男子剣道選手(年齢:25〜54歳、段位:4〜7段)5名とした。打突条件は面打撃動作(MA:その場から、MB:送り足で、MC:一足一刀の間合)と、突き動作(TB:送り足で、TC:一足一刀の間合)の合計5種類とした。2)計測方法;自動車衝突実験用ダミー人形(Hybrid III型)を使用した。ダミー人形の計測項目は、(1)頭部および口部の3軸加速度、(2)頸部の3軸荷重と3軸まわりのモーメントとした。 3.結果:1)面打撃におけるの頭部の最大加速度は169.0±84.25m/s^2、平均加速度は57.2±22.71m/s^2であり、加速度の持続時間は、12〜20ms、平均値は15.8±2.2msであった。両加速度とも打突条件により異なるが、MC動作が最も小さく、頭部傷害発生の可能性は最も低いものと考えられた。突き動作の最大加速度は32.1±20.29m/s^2、平均加速度は11.9±4.08m/s^2であり、持続時間は、75〜100ms、平均値で91.1±7.9msと極めて長かった。2)面打撃における口部の最大加速度は173.6±85.88m/s^2、平均加速度は61.0±25.09m/s^2であり、頭部加速度よりはやや大きかった。突き動作の最大加速度は62.9±37.96m/s^2、平均加速度は14.6±8.48m/s^2であった。3)頭部傷害を評価するために、JARIの人体頭部耐性曲線により傷害予測を行うと、頭部への一回の打撃により頭蓋骨々折・.脳震盪といった傷害が生じるレベルには達していなかった。6)突き動作では加速度レベルが低いため、加速度による頭部の傷害発生の可能性は低いが、頸部への影響については、今後検討する必要性がある。
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