1.目的: 平成14・15年度において、剣道の打突が剣道具(面)を通して人体頭部に与える影響についてJARIの頭部耐性曲線を元に衝撃度の障害発生について検討したところ、1回の打突力により頭蓋骨骨折や脳震盪と言った障害が生じるレベルには達していないことが明らかになった。しかし、打撃によると推察される高齢者の硬膜下血腫の発症例も報告されていることから、打撃力を極力緩衝することが障害予防につながると考える。そのためには、既存の剣道具(面)の布団部芯材の種類・縫製・構成などによる打撃力の緩衝性について検討し、より安全性の高い「面」の開発への提案をするものである。 2.方法: 1.自作の打撃力測定システム(打撃力発生装置、打撃力測定装置)を使用し、布団の芯材の種類や構成の相違による緩衝効果を比較検討した。2.製品安全協会安全規格検定試験(1kgの玉軸受用鋼球を、250mmから落下)を行い、打撃力センサーにより布団の緩衝性について測定する。布団芯材の相違による緩衝性を計測するためにプレスケール(富士フイルム)を用いて、頭部表面に直接加わる圧力分布を検討した。 3.結論 1)面布団の芯材は、伝統的に使用されている真綿のような含気性の高いものを主材料とする方が緩衝性は高くなる。さらに、布団の縫製の仕方も、なるべく荒い(二分五厘刺し)方が緩衝性は高くなる。 2)化学性芯材(ソルボセイン、アルファゲルなど)も、緩衝性が高くなる。 3)布団全体が柔らかいと、単位あたりの圧力は大きくなる。 4)布団表面に硬い牛生皮などを貼付すると単位面積あたりの圧力は小さくなるが、トータルとして頭部に加わる衝撃力は大きく変化しない。 5)面布団は衝撃力吸収性の良い芯材を使用し、面の面ぶちと牛生皮を直接連結もしくは一体化し、面布団正面部を覆うことにより、包輪を介して衝撃力を受けることにつながるため、頭頂部への直接的衝撃力は小さくなる。
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