安全性の高い剣道具(面)を開発するための基礎的研究として、平成14・15年度においては、剣道選手が面や突などを打ち込まれた際に剣道具(防具)をとおして人体に伝達される衝撃力をバイオメカニクス的観点から検討するために、打撃用ダミー人形への打突と被験者への実戦的な打突により頭部および頸部へ及ぼす力学量(加速度・荷重・モーメント)を計測し、頭部の安全性についてJARIの人体頭部耐性曲線を元に検討した。 平成16年度は、剣道具(面)の布団部芯材の種類・縫製・構成などによる打撃力の緩衝性能について検討し、打撃力を極力緩衝できる安全性の高い剣道具(面)の開発への提案を行った。 得られた結果をまとめると以下の通りである。 1.一足一刀の間合からの面打撃は、加速度レベルが低いため、加速度による傷害発生の確率が3種類の打ち込み条件の中では最も低かった。 2.頭部への一回の打撃により頭蓋骨々折・脳震盪といった傷害が生じるレベルには達していない。しかし、慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma)の発症との関連も心配されることから、連続的な衝撃や長年にわたる衝撃の影響について、今後検討する必要があると考える。 3.突き動作では加速度レベルが低いため、加速度による頭部の傷害発生の可能性は低いと考えられる。 4.面布団の芯材は、真綿のような含気性の高いものを主材料とすること、さらに布団の縫製の仕方も、なるべく粗い方が緩衝性は高くなる。 5.頂頭部への直接的衝撃力は小さくするために、牛生皮を面ぶちに直接連結もしくは一体化させて面布団正面部を覆う面に改良した。
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