研究概要 |
対象は、陸上競技の長距離選手を中心に、実業団および大学の陸上競技部に所属する各種目の競技者182名と一般対照群大学生112名であり、遺伝子の解析には血液細胞あるいは口腔粘膜をサンプルとし、総DNAを抽出した。PCR法によりATP合成酵素サブユニット8およびサブユニット6遺伝子領域であるmtDNAの8,366bpから9,207bpの領域を増幅した。Mtゲノムの多型では、複数の多型が連鎖しているので系統樹の解析は重要である。そこで、クラスター解析の近隣接合法を用いて分子系統樹を作成し、持久性能力に関係するSNPsを探し出す試みも行った。遺伝子領域でSNPsを持たないHaplogroup I、Mt9053G→A (Ser176Asn)を持つHaplogroup II、Mt8414C→T(Leu17Phe)を持つHaplogroup III、Mt8584G→A (Ala20Thr)を持つHaplogroup IV、Mt8701A→G (Thr59Ala)だけのHaplogroup V、Mt8701A→Gに加えてMt9180A→G (Val218Val)を持つHaplogroup VI、Mt9123G→A(Leu199Leu)を持つHaplogroup VII、Mt8794C→T (His90Tyr)を持つHaplogroup VIIIが確認された。Haplogroupごとに分布する競技者を見ると、Haplogroup VIIIに属する23名のうち、エリートランナーは6名(26.1%)を占め、非エリートランナー10名を加えると、総ランナーは16名(69.6%)であった。これに対し、他のHaplogroupに属する271名のうち、エリートランナーは25名(9.2%)であり、総ランナーは92名(33.9%)であった。HaplogroupVIIIに属するエリートランナーの割合は、他のHaplogroupに属するエリートランナーの割合に対して有意に高く(オッズ比=3.47,P<0.05)、総ランナーの割合も有意差が見られた(オッズ比=4.45,P<0.001)。
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