研究概要 |
本研究の目的は,過去(若齢期)に運動を行ってから時を経て再び運動を再開した場合,過去に行った運動が再開した運動適応にいかなる影響を及ぼすかを検討することである。本研究は特に運動の効果器である骨格筋の代謝特性に着目した基礎的研究であり,研究対象としてラットを用いている。また,運動は強度や持続時間の規定が容易な小動物用トレッドミルを用いた持久性走トレーニングを用いた。なお,当初,本研究では老化促進マウスを用いる予定であったが,飼育に問題が生じたため,ラットを用いることにした。 本年度は研究一年目であることから,若齢期で採用する持久性走トレーニングがラット骨格筋の代謝特性にいかなる影響を及ぼすかを明らかにすることにした。実験にはFischer系のラットを用い若齢期に持久性走トレーニングを実施した。トレーニング期間終了後,内側腓腹筋を摘出し,秤量後に急速凍結した。凍結した筋のサンプルは片側を収縮タンパク分析のために保存し,もう片側を用いて代謝特性の分析を行った。代謝特性の分析は凍結筋サンプルより連続切片を作成し,組織化学的定量法を用い,解糖系及び酸化系の酵素活性の測定を行った。 その結果,持久性走トレーニングの実施でもともと高い酸化系能力を有する筋線維において酸化系の代謝能力の亢進が見られた。しかしながら,その酸化系代謝の亢進が観察されたのは筋内の近位部の筋線維においてのみであり,走トレーニングおける筋線維の動員が同タイプの筋線維であっても筋内部位で異なることが示唆された。 なお,若齢期に実施したトレーニングの脱トレーニング効果を観察するために,現在トレーニングを行ったラットを引き続き飼育している。
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