研究概要 |
本年度は,筋損傷後の回復における筋線維機能的特性の検討を第一のテーマとし,第二のテーマとし損傷後の再生分化制御機構の免疫組織学的研究とした。最初に刺激伸展装置を用いてラット下肢筋の伸張性収縮を行わせ筋損傷を起こした。損傷後1から28日後における筋の機能変化を全筋から調べた結果,伸張性収縮を与えた2-3日後に30%までの張力低下が起こり,14日後にはほぼ回復してた。張力低下は収縮系のダメージ量の指標と考えられた。一方、損傷線維が再生する過程では枝分かれ線維を生じることがある。28日後の枝分かれ線維を持つ筋線維を実体顕微鏡下で選択し,skinned fibre法を用い正常に機能するかを単一筋線維にて検討した結果,最大張力/断面積と短収縮速度ともに対照線維より有意に低値を示していた。形態的には十分な回復が観察された後においても,収縮・調整・構造蛋白系の各レベルでは,それぞれ十分な回復が進んでいないではいないことが示された。免疫組織学を手法とする損傷後の再生分化制御機構の研究では,塩酸ブピバカイン注入により筋損傷を誘発し,2週間後までの横断像を観察した。1日後では筋線維間が大きく開き細胞接着物質であるfibronectinが拡散し,細胞内情報伝達物質であるvinculinの消失が観られ3日後に再生開始が認められた。MyoDはマクロファージとともに2日後には筋線維間に現れ4日後に消失した。5日後から再生線維の径が増し,7日後には中心核が多く観察され,14日後には対照筋とほぼ同様の径に達する線維と細い線維の混在が観られるが,Laminin, desmin, colagen III等の膜構造・細胞外情報伝達機構を形成する要素はほぼ正常な局在が観察された。このような収縮機能やそれを支える筋細胞内構造の再生分化と形態変化に対して,再生期に筋の活動様式を変化させた場合の影響を今後検討したいと考える。
|